アンカーボルト

DSC_0404DSC_0405

「お父さんって、我が家の屋台骨だよね」とか、
「いやー、君はクラフトの屋台骨だよ」とか言われることがあったら
恥ずかしいような、うれしいような気分になりますね。

そもそも、屋台骨って何のことだかご存知ですか?
人に対しては、組織を支える人という意味ですが、
建築では、家の構造のことを指します。
この屋台骨が少なかったり、頼りなかったりすると、
組織も家も、ちょっとの揺れで傾いてしまうのです。

さて、本日は、住まいの柱を増やすため、基礎と土台の作業を行いました。
ここでは、アンカーボルトが基礎と土台をつなぐ要となります。
木造住宅の基礎は、コンクリートにアンカーボルトが埋め込まれ、
それが突き出すように成形されています。
さらに、その上にアンカーボルトの孔のサイズにくり抜いた木の土台が重ねられ、
固定されているのです。

木造住宅のこちらの住まいにも、こういった工法がとられていましたが、
古い建物だったためアンカーボルトの数が足りず、これ以上の柱を増やせない状態でした。
(古い家では接合する金物が少なかったり、弱かったりすることが多々あります)
木材同士なら、上から金具で固定することもできそうですが、
基礎部分がコンクリートになっているため、それは難しい状態です。

一般的に、このような場合にとる方法が「あと施工アンカー」。
成形前ではなく、固まった状態のコンクリートに孔をあけ、
そこにボルトなどを固定するため、このように呼ばれることがあります。

まずは、ドリルで土台の木材と、基礎のコンクリートに孔を開け、
その孔の中にケミカルアンカーを注入。
ケミカルアンカーは、コンクリートとアンカーボルトを
とてつもなく強力な接着力で固定してくれます。
さらに、耐アルカリ性に優れているほか、振動や薬品にも強いため、
耐震補強などにも使用されています。

最後に上部からアンカーボルトを入れて、完成。

普段、なかなか目に触れることはないと思いますが
ここがしっかりしていなければ、耐久性や耐震性のない住まいになってしまいます。
デザインや仕様より、まずは構造体の見直しを優先しなければなりません。
とくに築年数が古い住まいは、基礎が老朽化している場合がありますので
問題があれば早急に対処したほうがよいでしょう。

2013 8/21 4:32 Posted by WI邸

仮筋交い

DSC_0420

スケルトンリフォームでは、壁や床をすべて撤去し、構造体だけにします。
とくに築年数が古い場合は、状態をチェックしてみると、
外からは見えなかった傾きやシロアリ、雨漏りによる劣化が浮き彫りになることも。
建て替えしなくて大丈夫? なんて心配になるかもしれませんが、
きちんとした材料と技術で建てられているのであれば、その部分だけを取り替えたり、
構造体を垂直・水平に戻すだけで、新築同様のような強固さを取り戻すことができます。

こちらの住まいも例外ではなく、
新築時には水平垂直を保っていたはずの梁や柱は、
経年や地震といった、さまざまな理由から徐々に傾いてしまったようです。
そこで、これをもとに戻すための工事が必要となりますが、
このときに活躍するのが『仮筋交い』です。
これは、建物が垂直・水平を保てるよう仮に設ける筋交いのことを言います。

まずは、梁や柱の一つひとつが水平・垂直になっているか水平器で確認し、
傾いていたら、正しい位置に戻していきます。
せっかく調節した梁と柱が、他の部分を直すことによって
また傾いてしまわないよう、仮筋交いを使って状態を固定します。
住まい全体が真っ直ぐに建っていることを確認したら、
梁や柱の接合部分を金物で固定。
仮筋交いを外しながら、今度は床・壁・天井の下地を入れていきます。

最終的には撤去されてしまうため『仮』という名前がついていますが
その重要性は名前以上のもので、
私たち現場担当も、それは慎重で丁寧な作業を行っています。

木造住宅は法的耐用年数が22年なんて言われていますが、
それはあくまでも税金の便宜上に定められたものです。
このようにきちんとメンテナンスを行えば、
70年、80年だって暮らしていくことも可能ですし、
これこそが、あるべき住まいの姿なのではないでしょうか。

経年とともに魅力が増すような住まいづくりがテーマのクラフトとしては、
できるだけ長く暮らして、じわじわと熟成されていく趣を
たっぷりと楽しんでほしいと思っています。

2013 8/20 4:31 Posted by WI邸

床下の湿気対策

DSC_0365DSC_0367

木造住宅で絶対に避けたいのが、床下の湿気。
築年数が古い物件はとくに、床下の湿気対策が十分でない場合が多く
湿気で根太などが腐ってしまったり、
シロアリ被害でボロボロになってしまうことがあります。
シロアリは温かく、暗く、たっぷりと湿気がある場所を見つけると、
そこで大好物の木材を食べながらぬくぬくと暮らしていきます。
大げさかもしれませんが、床下の湿気が原因で家が崩壊することだってあるんですよ。
今回は、住まいの大敵である湿気をなんとか防ごうと
床下の湿気対策を行ってきました。

まずはランマーを使って、地盤の土をしっかりと固めていきます。
エンジンが内蔵されていて、大きな音をたてて上下に振動し、土をならしていくランマーは、
皆さんも工事現場などでご覧になったことがあるのではないでしょうか。
土がしっかり締まったら、今度は防湿シートを敷いていきます。
これは厚めのポリエチレンフィルムでできていて、湿気が床上に上がってくるのを食い止めます。
湿気のもととなる土の上に直接敷きつめることで、より効果が発揮されます。
隙間なく敷き詰めたら、防湿コンクリートを流していきます。
防湿コンクリートとは6cmの厚さのコンクリート層のことで、
シートが動かないように固定すると同時に、湿気の上昇を防いで
床組をカラリとした状態に保ちます。
以上が、一般的な床下の湿気対策です。

最近では、建物が建つ全地盤にコンクリートを流し込むベタ基礎が主流で、
この場合は床下に湿気対策が施されていることがほとんどです。
しかし築年数の古い住宅は、住宅のなかでとくに負荷がかかる外壁部・間仕切り壁の骨組みの下などだけに
逆T字型の鉄筋コンクリートを配置するという布基礎が主流だったため、湿気対策がされていない場合もあります。

仕上げをしてしまうと目に見えない部分ですが、住宅の存続にかかわる重要な基礎部分。
適切な処置をしておいたほうがよいでしょう。

今回きちんとした処置を行ったことにより、安心して長く暮らしていただけるようになりました。

2013 8/7 4:31 Posted by WI邸

スケルトンリフォームの解体

DSC_0304

木造住宅をスケルトンリフォームするメリットは、
構造体をすべて見直し、問題があれば改修して、建物の寿命を延ばせることにあります。
一度、壁や床をすべて剥がし、表しになった柱や梁を見ながら、経年で劣化していないかどうか、
水平・垂直を正確に保っているかをじっくりと確認することができるからです。

ついでにお話しておくと、
1981年に改正された「新耐震基準」以前に建てられた住まいは、耐震性に不安があるため、
状況によっては床を抜いて基礎の補強をしなければならなくなることがあります。
これは大掛かりな工事になってしまいますが、
リフォームのタイミングで構造を見直すことができれば新築に近い状態となり、
一般的に約30年と言われている木造住宅の寿命よりも、はるかに延ばすことができます。
世代を超えて長く暮らせる住まいの秘訣は、きちんとした耐震と、湿気などによる劣化対策、
そして暮らし始めてからのメンテナンスに尽きるのではないでしょうか。
ここ数年で注目されているヴィンテージマンションのように古くても上質なものや、
アンティーク家具のように時を重ねるほどに魅力が増すものは、
新築と同等かそれ以上の価値が認められるべきだと私たちは思っています。

日本の中古住宅市場は、ここ数年で急激に成長しています。
いずれは、リフォームによってきちんと管理された住宅であれば、
海外のように古くても、新築と同じくらいの価値観で取引されるようになるのではないでしょうか。
古き良きものの価値をきちんと認めてあげたい。
そう思って、リフォームの仕事を続けています。

こちらのお宅は基礎強度には問題がなく、補強の必要はありませんでしたが、
間取り変更ための新たな柱が必要となり、基礎を増やすことにしました。
このようなことができるのも、スケルトンリフォームだからこそですね。

2013 7/22 4:30 Posted by WI邸

解体現場

DSC_0303_3

リフォームするお宅の解体現場にうかがうと
時々、すばらしい意匠に出会うことがあります。
技術のある大工さんによって建てられた住まいは、
解体しているときに、その腕前がはっきりとわかるものです。

今回工事をした築年数の古い木造住宅。
和室の天井は、とても印象的なデザインに仕上げられていました。

照明によって、模様が白く艶やかに浮かび上がる様子が
なつかしいような、新鮮なような、不思議な気分を誘います。
今で言うと、和モダンとでも言うのでしょうか。
おおらかな凹凸のある幾何学模様は、純和風の空間のなかに
モダンな印象をもたらしています。

こちらを設計したデザイナーは、どのような意図でこのデザインにしたのか。
どれほどの技術がある職人さんがこの天井をつくったのか。
飾り気のない純粋な和室だからこそ、天井に凝らされた意匠がぱっと目にとまり、
「すごいな〜」と感心してしまいました。
ちなみにクラフトのスタッフは私も含めて、プライベートでも大の建築好き。
と言うよりもむしろマニアな部分があるため、現場にいた営業やデザイナーたちと
この天井を話題に大いに盛り上がりました。
この素敵なデザインをリフォームデザインに活かすことも考えたのですが、
お施主さまの思い入れがそれほどなかったことと、
今回のリフォームのデザインコンセプトに合わなかったことから、
最終的に解体することになりました。

当時の設計者や職人さんたちに敬意を払いつつ、解体作業へ。

このリフォームが終わり、お施主さまが暮らしはじめて
また何十年後かリフォームすることになったとき、
その設計士や職人さんたちが「お、いい仕事しているな〜」なんて
ちらりとでも思ってくれたら、仕事冥利に尽きますね。

2013 7/19 4:29 Posted by WI邸